NFTはFTのようにいつでも大量に取引できるものではなく、流動性が非常に低いアセットです。あえて流動性を低くすることでコミュニティ形成をすることもありますが、投資的な観点からは魅力が下がります。
DeFiにおいて流動性は極めて重要なファクターであり、インセンティブをコントロールして流動性を上げるための様々なプロジェクトがあります。これは一つのプロジェクトで完結するのではなく、他のプロジェクトにFTを介して接続して設計されていることが特徴的です。これをコンポーザビリティといいます。
最近ではDeFiにならって、NFTでも流動性を向上させるための取り組みが増えてきました。DeFi要素が含まれていることからNFT-Fiなどと呼ばれています(NFTfiという名前のプロジェクトもありますが、それとは区別)。
本記事では、NFTの流動性を向上させるためのプロジェクトをまとめて紹介していきます。
NFTX

NFTXはNFTをプールに預けることで発行されるvTokenを使い、NFTの流動性を改善しようとするプロトコルです。
vTokenを発行するだけでなく、反対にvTokenを使ってNFTをredeemすることもできます。発行されたvTokenはsushiswapなどのDEXで取引され、NFTマーケットプレイスとの裁定取引がされることによって価格が定まっていきます。
NFTXには、NFTを預けるインベントリステーキングとvTokenとWETHのLPを預けるLPステーキングの2種類があります。インベントリステーキングでは、預けたNFTを預けることでそのNFTに対応したvTokenのリワードをもらいます。流動性提供ではWETHを持ち出している分、APRが高くなるように設定されています。
注意点としては、vTokenでredeemできるNFTがランダムであるため、NFTを預けた時点でpoolの中のNFTと混ざってしまい、自分の預けたNFTを取り戻すことができなくなる可能性があります。
FloorDAO

FloorDAOのエコシステムは、OlympusDAOの仕組みを流用しており、NFTXの利用にインセンティブを付与する形で接続されています。
FLOORというメインのトークンは、ETHおよびETH建のNFT資産の裏付けで発行されます。
FLOORはリベースが発生するトークンで、リベースにより発生したFLOORはFLOORをステーキングしているウォレットに配布されます。新しいFLOORはリベース以外にもBondという割引債券のような仕組みでも発行されます。Bondが購入されることでFloorDAOのトレジャリーに資金が流入します。
トレジャリーの利回りの源泉は、FLOOR-ETH LPの取引手数料とNFTXでのステーキングリワードであり、NFTXの利用に対して高い利回りというインセンティブを付与することで、NFTの流動性を上げています。
FloorDAOについては、こちらの記事にまとめてあります。
HiddenHand

HiddenHandは賄賂プロトコルです。ガバナンス投票に対してインセンティブを付与します。
ユーザーは外部プロトコルのガバナンストークンをHiddenHandに委任してトークンをロックします。外部プロトコルはHiddenHandに賄賂を支払います。支払われた賄賂が源泉となり、トークンをロックしているユーザーへの報酬となります。

HiddenHandはFloorDAOに対応しており、投票力となるトークンを委任することで、賄賂を間接的に受け取ることができます。
ここまでだけで、NFTX⇄FloorDAO⇄HiddenHandのコンポーザビリティが見えてきましたね。
BendDAO

続けてNFT担保のレンディングプロトコルを紹介していきます。最初は取引高も多いBendDAOです。
BendDAOはBluechipと呼ばれる優良銘柄のNFTを担保にETHを借りることができます。また、このレンディングをベースに様々な機能があります。
- NFT担保ローン:BluechipNFTを担保にETHを借りることができる
- NFT担保リスティング:担保にしたNFTをマーケットに並べながらETHを借りることもでき、売れたら借りているETHの返却に充てる
- NFT購入ローン:頭金を入金してローンを組んでNFTを購入することができる
ローンをすることで得られた資金で新たなNFTの流動性が生まれることを狙っています。
レンディングプロトコルなので、担保にしているNFTを清算する仕組みも備わっています。NFTの評価額が下がって担保割れすると自動的にオークションにかけられ清算されます。
こちらの記事で解説していますので、あわせてどうぞ。
NFTfi

続くレンディングプロトコルはNFTfiです。
こちらはマッチング型のレンディングプロトコルです。BendDAOはNFTの取引履歴に基づいてバリュエーションが決められていましたが、NFTfiでは担保にするNFTと借りたい金額、金利を設定しオファーします。申し込みがあれば契約が成立し、期日までに借りたお金が返済されなければ貸手がNFTを受け取ることができるという仕組みになっています。
BendDAOはBluechipに限られていましたが、NFTfiは幅広いNFTがマーケットに出回っています。ETHに加えてDAIでのレンディングができる点もBendDAOとの違いです。
x2y2

マーケットプレイスとして知られるx2y2ですが、最近になってレンディングも始めました。
x2y2もBendDAOのようにホワイトリストされたNFTプロジェクトが担保対象となっています。レンディングの仕組みはNFTfiのようなマッチング型で、金額や期間を指定して貸し手が見つかるとレンディング契約が成立します。
フロア価格よりも安い金額を貸し付けて、借り手が返済しなければ安くNFTを入手することができます。マーケットプレイスがベースとなっているので、うまくNFTを購入したいというユーザーをうまく取り込めると、レンディングプロトコルとしての出来高も増えていくのではと期待しています。
NFTperp

NFTperpはNFTのフロア価格に対してロングやショートをすることができるプロトコルです。
マーケットでの取引履歴からウォッシュトレードや異常値を削除したフロア価格が算出され、NFT無期限先物(パーペチュアル)の取引をすることができます。レバレッジは最大5倍です。
プロジェクトに対するフロア価格は、マーケット毎に見ていくと差があります。NFTperpは一種のプライスファインダーの役割を果たし、裁定が働くことでNFTの流動性が向上することが期待できます。
sudoswap

ここまでは、マーケットとは別枠でNFTの流動性向上に寄与するプロトコルを紹介してきましたが、マーケット自体も進化していて流動性向上に取り組んでいます。
sudoswapはNFTのAMM(AutomatedMarketMaker)的マーケットプレイスです。流動性提供者がNFTやETHをプールに入れ、NFTが売れた時の値動き(ボンディングカーブ)をあらかじめ設定しておきます。複数のプールが統合され、取引をしたい人はベストレートに対して取引を行ったり、プールに入っているNFTを直接購入したりすることができます。
AMM的なUIをしてはいますが、ボンディングカーブの設定が実質指値なので、裏側はオーダーブック形式に近いです。
OpenSeaなどのマーケットプレイスでもCollectionOfferにぶつければ即座に取引はできますが、基本UIとしてNFTの売却を即座に行えるのは快適です。
詳しい記事はこちらを参考にしてみてください。
Blur

BlurはNFTのロイヤリティ問題が盛り上がってきたタイミングで登場したマーケットプレイスです。
機能的には一般のマーケットプレイスですが、これまでよりもライブデータを重視したトレーダー向けのマーケットプレイスです。
また、NFTのリスティングや取引がトークンエアドロップの対象となっています。過去にx2y2やLooksRareもやってきましたが、ウォッシュトレードの懸念はやはり残ります。ウォッシュトレードは見せかけの流動性ですが、リスティングリワードは市場に出回るNFTが増えるのでポジティブに働いてくれるはず。
まとめ
NFTの流動性を上げるためのプロジェクトを紹介しました。
DeFiの仕組みを踏襲してコンポーザビリティのあるプロジェクトも出てきています。今後はFTだけでなくNFTを介してGameFiとの絡みも出てくるでしょう。クリプト冬の時代といわれていますが、NFTperpなどの新しいプロジェクトも出てきており、NFT-Fiは引き続き目が離せない分野です。